【コラム第三回】武豊(後編)

2013年凱旋門賞
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こんにちは、佐藤幸一です。

第三回の今回は、キズナの鞍上の「武豊」後篇です。

前回武豊の勝ち鞍が減った真の理由は、大口馬主との確執や社台グループの馬に騎乗させてもらえなくなった事ではない、と書きました。

真の理由、それは「武豊自身の騎乗能力の衰え」だと思ってます。

その衰えは2010年の落馬事故の前から少しずつ現れていました。

例えば、2009年ウオッカに騎乗した安田記念は見事1着にはなりましたが、直線で前が詰まり、口向きを強引に変える武豊らしからぬ騎乗をしていました。

・馬込みを捌けずに前が詰まってしまう。

・そして強引に馬の口向きを変えるような騎乗をする。

以前の武豊のレースでは、前が詰まるようなコース取りはほとんど見受けられなかったのに、この安田記念のようなレースがちらほら見受けられるようになっていたのです。

そこに、2010年の落馬事故。。

この事故をきっかけに捌けない武豊のレースぶりは顕著に現れます。

一般的に多頭数になればなるほど、前の馬を捌く機会が増えます。

212勝をあげた2005年には15頭以上の多頭数で勝率26.4%と物凄い数字をたたき出していますが、落馬事故の1年前、ウオッカで安田記念を勝った年には、勝率16.5%まで落ちています。

そして、、、

2012年は8.2%。。。

多頭数での武豊は迷わず消せ、ぐらいの酷い数字になっていきます。

自身の騎乗能力の衰えに加えて落馬事故の恐怖からでしょうか、馬込みに馬を突っ込ませることさえ出来なくなっていたように見受けられました。

2005年212勝

  ~ 5頭   0-  0-  0-  0/  0
6~ 8頭   8-  0-  2-  9/ 19   42.1%  42.1%  52.6%
9~11頭  38- 24- 29- 58/149   25.5%  41.6%  61.1%
12~14頭  46- 44- 29-113/232   19.8%  38.8%  51.3%
15~     120- 60- 52-223/455   26.4%  39.6%  51.0%

2009年140勝

  ~ 5頭   1-  0-  0-  0/  1  100.0% 100.0% 100.0%
6~ 8頭   3-  2-  2-  4/ 11   27.3%  45.5%  63.6%
9~11頭  24- 19- 11- 37/ 91   26.4%  47.3%  59.3%
12~14頭  29- 23- 18- 92/162   17.9%  32.1%  43.2%
15~      83- 62- 60-298/503   16.5%  28.8%  40.8%

2012年56勝

  ~ 5頭   0-  0-  0-  1/  1    0.0%   0.0%   0.0%
6~ 8頭   1-  3-  1-  3/  8   12.5%  50.0%  62.5%
9~11頭   5- 11-  3- 37/ 56    8.9%  28.6%  33.9%
12~14頭  16- 11- 10- 76/113   14.2%  23.9%  32.7%
15~      34- 36- 30-313/413    8.2%  16.9%  24.2%

それが!!

今年は明らかに良くなっています。

多頭数のダービーでもキズナで追い込みを決めてくれました。

そしてそして、サイレントソニックで勝った先週の北九州短距離ステークス。

武豊はここまで復活したのか!と驚いたレースです。

直線で若干、口向きを強引に変える所はありましたが全般的にはスムーズな柔らかいレース運びできっちりゴール前で差し切りました。

武豊自身、今年は体にキレがあると言っているようですが、2010年の落馬事故くらいまでには戻ってきていると確信したレースでした。

データ的にも多頭数での勝率が13.1%と戻ってきています。

2013年62勝

  ~ 5頭   0-  0-  0-  1/  1    0.0%   0.0%   0.0%
6~ 8頭   0-  0-  0-  1/  1    0.0%   0.0%   0.0%
9~11頭  10-  8-  7- 31/ 56   17.9%  32.1%  44.6%
12~14頭  14-  3- 12- 46/ 75   18.7%  22.7%  38.7%
15~      38- 31- 19-203/291   13.1%  23.7%  30.2%

そこで、なぜ、成績が戻ってきたのか?

ということになりますが、体調の良さに加えて、決定的だったのは

キズナとの巡り合いだったと思っています。

ラジオNIKKEI杯2歳S3着、弥生賞5着。

佐藤哲三騎手の怪我で回ってきたチャンスでしたが、2戦結果を出せずに終わりました。

社台の馬だったら乗り替わりになっていたかもしれないですが、馬主のマエコーさんの弟前田晋二さんは、そんなことはせずに続投で毎日杯へ。

そこで驚くような脚を使っての差し切り勝ちを収めます。

父親のディープインパクトを彷彿させるような飛ぶような脚でした。

京都新聞杯も同じように圧倒的な力を見せて簡単に差し切り勝ち。

そして運命のダービー。

かつてキズナの父親ディープインパクトに武豊が騎乗して勝ったレースです。

そのレースで武豊は、直線入口で前を詰まらせてしまうイマイチな騎乗。

しかし何とか差し切り、勝利することができました。

キズナの直線はヨレながらで、ディープインパクトのようになカッコいい勝利では決してありませんでした。

けれど、

まるでキズナが、親父が、姉が世話になった、かつての天才武豊の今を立ち直らせるために「大丈夫だよ!丈夫だよ!僕が勝たせてあげるから!!」とでも言っているように、必死に走っているように見えました。

ダービーのレース後、武豊はさらに成績が良くなっています。

間違いなく武豊はダービーで自信を取り戻しています。

キズナは一夏を越えて物凄く馬体が充実していて、はちきれんばかりの馬体をしています。

日本での最終追い切りもとても良かったです。

凱旋門賞まであと1か月。

凱旋門賞は簡単に勝てるレースでは決してありません。

しかし、

今年ほど勝って欲しいと思える騎手と馬は過去にいませんでした。

武豊とキズナにディープインパクトで無しえなかった栄冠を是非掴み取って欲しい。

こんな出来過ぎな結果も、この1人と1頭にならば、あってもいいのではないでしょうか。

まずは無事にステップを走り終えて、本番を迎えてほしいと切に思っている今日この頃です。

次回は、フォア賞とニエル賞の後に書かせて頂く予定です。


筆者:佐藤 幸一

筆者紹介

JRA日本中央競馬会の馬券投票システム等の構築に携わった後、競馬ポータルサイトnetkeiba.comでプロデューサー業を務める。

現在は競馬オープンコンテンツKOCのプロデューサー。

競馬ファン歴は20年以上で最初の競馬場観戦はサクラチヨノオーが勝った日本ダービー。

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